ああ格差社会 第1回

人間には2種類ある。「労働でお金を得る人」と「名前でお金を得る人」だ。
前者は、労働の対価が賃金であり、労働と賃金はどこまでいっても1:1の関係でしかない。一方後者は自分が持つ知識や技術、名声などがその人固有の価値となり、資産は倍々ゲームで増えていく。
これが、日本を格差社会たらしめている原因である。誰も日本には格差があるなど大っぴらに公言しないが、現実問題、それは存在する。そしてその格差は、子ども社会において如実に現れている。
東京・千代田区に住む筆者は、“超富裕層”のひとりである。その著者の子どもの、無邪気かつ非常識な発言などから、日本の格差社会を浮き彫りにする今シリーズ。連載でお届けする。
どこかに勤めること。パートに行くこと。アルバイトをすること。
世の中に必要な物やサービスを提供すること
人が好きなこと、他人がやらないことをやって大きく儲けること
「人間というものは、ブレーキとアクセルが逆についている」と言ったのは、確か、かつての長者番付(高額納税者を掲載した書物。現在では、個人情報保護の観点から廃止されている)で常連だった斉藤一人氏であったように思う。ちなみに、高額納税者であったということは、要は「たくさん稼いでいる」ということである。
斉藤一人氏いわく、「このことを理解していないものは、商売で成功することはできない」ということだ。
彼が例示していたのは、「医療費負担が少しでも増えると怒るくせに、高価なバッグを平気で買ったりする」ということである。
つまり、人の命に関わるとても大切なもの(=医療費)の方がないがしろにされて、自分の命とはまったく関係のない高価なバッグのほうに走る。これが人間というものだということである。
これが分からないと、「世の中で必要とされるもの」を安く作るビジネスを立ち上げては、失敗する。
逆に、「世の中に必須ではないが、人が好むもの」を高く売るビジネスを立ち上げた人が、成功することになる。
そう、実際に食費を削って、趣味のものを買う人は、そこら中にいる。
逆に、趣味のものを我慢して食費にかけるのは、ほとんど見当たらないであろう。もしそんな人がいたとしたならば、それは食事の趣味としている食通くらいである。
繰り返しになるが、「人間とは、命に係わるはずの食費を削って、命とはまったく無関係の趣味のものを買う性分だ」という事実を理解していなければ、商売や事業で成功することはできない。
けれども多くの人は、この“人間の逆の原理”を知らず、あるいは、知っていてもそれに従わず、相変わらず「世の中に必要なもの」をひたすらに探求し、それを事業にして儲けることだけを考えている。そのため、最終的には失敗する。
そして、子というものは、いろいろな考え方をもって親と接触するが、最終的には親の思想をそのまま踏襲してしまうことが多い。
「地方の子」は、「どこかに勤めること」や「パートに行くこと」、「アルバイトをすること」がビジネスであると考える。それらは単に「労働する」というだけのことで、ビジネスでもなんでもないのに、そう考える。
なぜなら、その子の親がそう考えているからであり、彼らにとっては、「生活の糧を得んがために働くこと」がビジネスなのだ。
けれども、「都市部の子」の親ともなれば、ビジネスというのは、単に生活の糧を稼ぐためのものではなく、世の中に対して何かプラスになるようなことをしなければビジネスをする意義がないと考えている。したがって、「世の中に必要な物やサービスを提供すること」を考えるが、そのための事業を始める一歩が踏み出せない。
しかしながら、その一歩を踏み出さないのは、実は、正解である。先に述べたように、“人間の逆の原理”があるがゆえに、そういった事業は、ほぼ100%、失敗してしまうからである。
ところが、そのうちの何人かは、その一歩を踏み出してしまい、最終的には都市部に住めなくなってしまうことになる。
一方、「都心の子」の親は、“人間の逆の原理”をよく知っている。
言ってみれば、なぜ、宝くじの胴元が大儲けできるのかをよく知っているのだ。したがって、「人が好きなこと」や「他人がやらないこと」をやって大きく儲けることを考えるし、実際に実行する。
そうして得たお金を使って社会貢献し、多くの人に感謝される。これこそが彼らのビジネスである。

匿名寄稿
千葉県の農村部出身。現在、東京都千代田区永田町周辺に在住。
某士業に就き、実績は国内外1000件以上。
東京の一等地にオフィスを構え、業界屈指の雄としても知られている。