ああ格差社会 第2回

人間には2種類ある。「労働でお金を得る人」と「名前でお金を得る人」だ。
前者は、労働の対価が賃金であり、労働と賃金はどこまでいっても1:1の関係でしかない。一方後者は自分が持つ知識や技術、名声などがその人固有の価値となり、資産は倍々ゲームで増えていく。
これが、日本を格差社会たらしめている原因である。誰も日本には格差があるなど大っぴらに公言しないが、現実問題、それは存在する。そしてその格差は、子ども社会において如実に現れている。
東京・千代田区に住む筆者は、“超富裕層”のひとりである。その著者の子どもの、無邪気かつ非常識な発言などから、日本の格差社会を浮き彫りにする今シリーズ。連載でお届けする。
一戸建て
一戸建てかマンション。一戸建てに住めない人(or 一戸建てを買えない人)が、マンションに住む
マンション以外に考えられない。タワマン(タワー型マンションの略)で、入り口に受け付けがあるのが、当たり前
最近では地方にもマンションが建つようになったが、「地方の子」の親の頭には、「団地」ないしは「集合住宅」のイメージが強力にこびりついており、マンションに対するイメージはマイナスである。なんとなく、アパート(すなわち、集合住宅の一種)の延長線上と考えている向きもある。
なので、当然のことながら「建物」という括りの中では、一戸建てというのがトップにあり、「買えるなら戸建」というのがほぼ常識となっている。要は、今いるアパートを抜け出して、何とか戸建に住みたいというのが願望なわけである。
逆に言えば、都心のマンションが数億円などと聞くと、「たかが集合住宅にそんなバカ高いカネを……」とあきれてしまうのである。
これに対して都市部に行けば、アパートの延長ではない高級マンションも見ることができるので、都市部に住む人たちは、マンションというものが戸建以上の価値を持つ場合があることも知っている。
けれどもやはり、一戸建て信仰は強く、おそらく「同じ値段」なのであれば、ほぼ完全に、マンションよりも一戸建てのほうが選ばれることになる。実際、映画『天空の城 ラピュタ』には、「人間は、地上を離れて生活することはできない」みたいなフレーズがあるが、都市部に住む人たちは、これに大いに共感している。
けれども、都心となれば、価格が一億円以上のマンション(億ション)に住んでいるのが当たり前である。そしてまた、そういった億ションはほとんどがタワマン(タワー型マンション)である。
都心の住人が、一戸建てではなく、あえてそういったタワマンの億ションに住む理由は、セキュリティがしっかりとしているうえに、プライバシーも守られているからである。
実際、都心のタワマンには、それなりの社会的地位を有していたり、有名であったりという人が住んでいることが多い。
そうした人が一戸建てに住んでいると、泥棒や強盗にあったりすることも多く、用心すればするほど、マンションが選択されることになる。
各階ごとのセキュリティや24時間ゴミ捨てなど、そうした設備がきちんと備えられているのは超高級といわれるマンションか、妥協しても高級マンションということになり、そういうマンションにはダブルオートロックはもちろんのこと、きちんとした受付もあって、しっかりと教育されたコンシェルジュが滞在している。
そこに住む子どもたちは、出かけるときにはコンシェルジュに挨拶をして出かけ、帰って来たときにもコンシェルジュと一言かわしてから帰宅する。
生まれてからずっとこうした状況なのであるから、この生活スタイルに慣れてしまっており、それが当然のことだと思ってしまっている。
実際、うちの子どもたちが普通のマンションに遊びに行き、入り口を素通りしてその人の部屋に行こうとしたときに、「パパ、勝手に入って大丈夫なの!? 僕たち、泥棒さんみたいだね……」と怯えたような顔で言ったことがある。
「都心の子」からすれば、マンションというものはオートロックを通った後に、ちゃんとした受付があって、そこの許可を得てから入るのが当たり前となっており、マンションの入り口を無断で通ることには罪悪感すら覚えるのである。
こんな現象は、それこそ「地方の子」もその親も思いつきもしないことである。
マンションについてどう思うかという問いに対する答え方で、お里が知れてしまう。答え方には、十分に注意したいものである。

匿名寄稿
千葉県の農村部出身。現在、東京都千代田区永田町周辺に在住。
某士業に就き、実績は国内外1000件以上。
東京の一等地にオフィスを構え、業界屈指の雄としても知られている。