ああ格差社会 第7回

人間には2種類ある。「労働でお金を得る人」と「名前でお金を得る人」だ。
前者は、労働の対価が賃金であり、労働と賃金はどこまでいっても1:1の関係でしかない。一方後者は自分が持つ知識や技術、名声などがその人固有の価値となり、資産は倍々ゲームで増えていく。
これが、日本を格差社会たらしめている原因である。誰も日本には格差があるなど大っぴらに公言しないが、現実問題、それは存在する。そしてその格差は、子ども社会において如実に現れている。
東京・千代田区に住む筆者は、“超富裕層”のひとりである。その著者の子どもの、無邪気かつ非常識な発言などから、日本の格差社会を浮き彫りにする今シリーズ。連載でお届けする。
小学校と中学校が義務教育で、高校からは義務教育ではない。大学なんて、とても、とても……
高校までは義務教育のようなもの。大学もそう。できれば大学院にも行きたいし、留学もしたい
大学まで含めて、すべて近所で、身近にある。学校は学歴をつけるための道具でしょ?
特別な例外を除いて、地方都市に大学があるが、地方に大学はない。
だから、「地方の子」にとって大学とは無縁の存在である。無縁の存在なので、「行こう!」という強いインセンティブは働かない。
これは、大学の話だけではない。高校とて、その地方には存在しないことがあるのだ。
現に、地方では人口の関係で特に進学校の学区が広く、その地方のそれぞれから優秀な子ども達が集まる。
けれども、その進学校に入れる生徒の率は、学校が位置する地域が最も高くなるのだ。
たとえば、M市にその地域で最高の進学校であるC高校があったとすると、M市のM中学校からC高校に行く率が最も高く、M市内のM中学校以外の中学校がそれに続く。
あとは、M市から離れるにつれ、C高校への進学率は低くなっていく。
これは実は、大学でも同じような現象となって現れる。
たとえば、東大(東京大学)に行く率が最も高いのは東京都、それも東京23区内に住んでいる高校生である。
そして、浦和高、湘南高校、千葉高など、東京近郊のトップ校がそれに続く。そうやって、東京から離れるにしたがって、東大に行ける率は下がっていく。
こうした現象が関係する別の側面として、「地方の子」の大学進学率は極めて低く、「都心の子」のそれはかなり高い、ということが起こる。
たとえば、地方の小学校では40人クラスのうち、大学に行くのはほんの2~3人であるのに対し、都心の小学校では逆に、大学に行かない子が、ほんの2~3人ということになる。
都市部には、必ず進学校の高校がある。なので、高校に行くのは「当たり前」ということになる。
けれども地方では、そうではない。高校に行くのですら「難関」なのだ。
ましてや大学なんて、夢のまた夢であったりする。これが21世紀になった今でも、日本の悲しい現状である。
では「都市部の子」はどうかというと、先に述べたように、地方都市には必ず進学校が存在する。だから「都市部の子」にとって、高校に行くのは当たり前であり、いわば高校までは義務教育のようなものなのである。
けれども、地方都市には大学があるとは限らない。また、あったとしても、それが一流大学である場合はほとんどなく、地方の二流か三流の国立大学である。「都市部の子にとっても「一流大学」というのは身近ではないのだ。
しかしながら、進学校に行っていればこそ、大学に行くのは普通になるし、できればそれ以上のところとして、大学院にも行きたいと思うし、できれば留学等もしてみたいというような夢も持つ。
これに対して、「都心の子」にとっては、一流大学というのは、極めて身近な存在である。
休日の東大に行ってみれば分かるが、近所の子どもたちがキャンパスの中で走り回っていたりする。芝生の上でお弁当を食べていたりもするのだ。大学のオープンセミナーに参加することもできるし、大学病院のお世話になることもある。
そしてまた、周りには、一流大学の卒業生がたくさんいる。更には、その一流大学を目指す仲間も、ざらにいる。
こんな環境で育てば、それこそ「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではないが、自然と「一流大学に行って当然」という考えになるだろう。
聞いた話では、毎日英語を2時間ずつ勉強する「地方の子」よりも、1週間に2時間程度しか英語の勉強をしない「都心の子」のほうが、英語力が高いそうだ。
そしてこれについては、今の私の娘や息子を見る限り、決して嘘のようには思えない。
「都心の子」は、一流大学に行くのは当然として、大学院も、留学も、周囲の仲間と同様に、望めば必ずいけるものだと思っている。
そしてまた、既に前の項で述べたように、学歴の高さと収入の高さが必ずしもリニア的に比例しないことはよくわかっているので、学歴は収入を高めるものではなく、どこで活躍しても恥ずかしくない学歴をつけるためのものだと思っている。

匿名寄稿
千葉県の農村部出身。現在、東京都千代田区永田町周辺に在住。
某士業に就き、実績は国内外1000件以上。
東京の一等地にオフィスを構え、業界屈指の雄としても知られている。