コロナ時代に注目のハイリターン投資術― これからの日本を支える「エンジェル投資」とは?

新型コロナウイルス感染症の影響で株価の先行きが見えない中、新しい投資として注文される「エンジェル投資」。
起業が盛んなアメリカでおなじみの投資法だが、日本の起業ブームを背景に、富裕層や投資の感度が高い人たちの間で知られるようになってきた。
しかも、日本では積極的にエンジェル投資をする人がまだ少ないため、今なら数十万円から投資できるチャンスがあるという。
「1口30万から、エンジェル投資家になって億を築く!」(ぱる出版)の著者にして、エンジェル投資家として100億円の実績を誇る増田裕介氏に、エンジェル投資の魅力や投資方法を聞く。
増田:スタートアップのベンチャー企業に少額の出資をする投資方法で、見返りとして株式などを受け取るものです。スタートアップが非常に盛んなアメリカでは、エンジェル投資が活発に行われています。
通常、起業は親や友人からお金を集めてスタートするものですが、「プロダクトを作れるか作れないか…」というくらいのタイミングで資金がショートしてしまうことが多いものです。
こうした、スタートアップで資金不足に陥る状態を「死の谷」と呼び、この「死の谷」を超える時に登場するのがエンジェル投資家だ、というわけです。
アメリカにはこうしたエンジェル投資家が多い、だからスタートアップが非常に伸びやすいという現象に繋がっているのです。
最近は日本でも起業する人が増え、学生起業家が上場するケースも珍しくなくなってきていますし、そこにきて、魅力的な投資商品がなく、新型コロナウイルス感染症の影響で株価の先行きが見えない状況下、エンジェル投資に興味を持つ投資家の方が増えてきている印象もあります。
増田:私は大学時代から、出資を受けず自分のお金で起業して、そのお金を増やす形でビジネスを大きくさせてきました。
そんな中、25歳くらいの時、先輩経営者の方々から「面白いIT企業がある」と聞き、何のことかわからぬままその企業への出資をしたのがエンジェル投資の初体験でした。
その後、その会社以外にもエンジェル投資を続け、それらはほとんどIT企業でしたが、彼らの中から徐々に、いろいろなプロダクトを作り、世の中にインパクトを与える会社が登場してきたんです。
もちろん、上手くいく会社も上手くいかず倒産した会社もありました。けれど、エンジェル投資をした側の私としては、そうしたエンジェル投資の経験を通して「世の中に良いことをしたい」という気持ちが次第に強くなっていったんです。
普通の投資は自分のお金を増やすか資産を守るかがその目的になりますが、エンジェル投資はスタートアップを応援するイメージがあり、そこが「社会を良くする」と強く繋がってくるのです。
もちろん、見返りに信じられないくらいの額が戻ってくる時もある。これもまたエンジェル投資の魅力ですが(笑)。
増田:ベンチャー企業が集まり、資金調達を目的にアイデアや技術を短時間でプレゼンする「ピッチイベント」に参加し、エンジェル投資とはどういうものか知るのが良いと思います。
銀行や証券会社でピッチイベントを開催したり、ピッチイベントだけを集めてSNSで集客している会社もあります。
弊社「RicheLab(リッシュラボ)」※http://riche-lab.jp/riche-lab/ でも年6回ほど開催しています。参加者は年々増えていましたが、本を出版してから急増しました。
本の影響は凄いですね(笑)。
増田:推奨しているのは30万円からです。理由はスタートアップの会社のバリュエーション(企業価値)が3,000〜6000万円くらいが一般的で、30万円だと1%の株を持つことになりわかりやすいので一つの目安として話しています。
クラウドファンディングのFUNDINNO(ファンディーノ)※https://fundinno.com/ や、SNS上でエンジェル投資ができる会社の平均投資額は10万円代というところもあります。
本の表紙に書いた「100万円が3億円」という数字は、スタートアップで3,000万円の価値がある会社に100万円投資して、この業界で「ホームラン」と呼ばれるIPOをして会社の価値が80〜100億円になった場合です。
3,000万円の会社が90億になると300倍という数字になり、100万円投資したら3億円リターンということもあり得ます。いつつぶれるかわからない、リスクがあるスタートアップに出資しているエンジェル投資の特典だからこそ起こりうる話です。
「シード・アーリー」と呼ばれる起業直後から1年半くらいの段階を過ぎ、「シリーズA」「シリーズB」と呼ばれるほぼ上場が見えてきたタイミングになると、バリュエーションが上がり30万円レベルの投資は受け付けてもらえなくなります。
増田:どこかの女医さんと違って「失敗しない」はこの世にないと思いますが(笑)、ある程度これがいいのではと思うのは「そのプロダクトがどのくらい生き残れるか」を考えることだと思います。
というのは、エンジェル投資で失敗するパターンは「これは絶対に伸びる、だから今出そう」と急に判断してしまうことだからです。
エンジェル投資はまだプロダクトが出来ていない段階で、本当に伸びるかどうかは正直わかりません。凄く良いストーリーで凄く良いプランかもしれませんが、それが本当に実現出来るかはわからないのです。
それより、その会社のコスト感覚を調べた方が良い。それは例えば、エンジェル投資で2,000万円を集めるとしたら、この2,000万円でどれくらい生き残れるか?月々のコストはいくらかかり、6ヶ月は生き延びるがその後はどうなるかというファイナンスがしっかり見えている会社はかなり成功の角度が高いです。
逆に、よくわかっていない会社は1,000〜1,500万円が入ってきて、それを広告やプロダクトに使ってしまい、2ヶ月後に資金がショートしてしまいます。そういう会社はまず上手くいかない。
そんな風に、私の今までの経験から言えることは、そのスタートアップでコストがどう調整されているかを聞くことで、約7割の案件は投資する価値がないと判断できます。
増田:時間的余裕とニアリーイコールなのが「人付き合い」と思っています。
ピッチイベントも時間がないと顔を出せませんし、打ち合わせや出資をする際も代表やスタッフと直接話した方が雰囲気はわかります。
そもそも、人付き合いというか、しっかりしたコミュニケーション能力がないと投資相手から有益なコメントを聞き出すのは難しいです。
今はエンジェル投資家に会うのもSNSですし、投資を募っている起業家もSNSで会えることが多く、例えば次のようなサイトで情報交換ができます。
・Founder(ファウンダー)https://found-er.com/
・グッドエンジェルhttps://angel.good-hills.co.jp/
ただし、どこにも詐欺のような人はいるので、気をつけるに越したことはありません。しっかりしたエンジェル投資家かどうか見抜く方法は、どこに出資しているかを聞けば良いだけです。
変な人に出資されると上場ができなくなるので企業側も慎重になります。出資先がそれなりのところであれば、エンジェル投資として安心と判断できます。
そうした失敗しない投資先の見分け方は、本の中で詳しく紹介しているので参照していただければと思います。
増田:先輩に進められたIT会社は、出来レースと思うほど上手くいきました。当時は500〜1000万円を投資して、5〜10倍のリターンになりました。
バイアウトの場合は1年半、IPOの場合は4年くらいかかり、自分で見つけるエンジェル投資は10回やって1〜2回当たるくらいの確率です。それでも投資として成り立ちます。
エンジェル投資で何とか角度をあげて成功したい場合は、「エンジェル投資家が誰なのか」「そこに応援している人が誰なのか」が重要だと思っています。
というのは、その人達が入っているとなぜか形になるということがあるからです。
それから、失敗してしまった経営者がそれで終わりかというとそうではなく、また新たな事業をすることもあります。その場合、失敗した経験があるので、次のプロダクトはより良くなりそれが育っていくケースも多い。
そこがエンジェル投資の面白さというか、成功してお金をもらうのももちろん嬉しいですが、たとえ失敗してもエンジェル投資は投資額自体が少ないので、人間関係は険悪にならず、関係は切れないので、逆に僕が何かやりたい時には過去の出資先が手助けしてくれることもある。
そういう人脈づくりが面白いと思っています。これが何千万、何億円の投資だとそうはならないと思いますが、エンジェル投資は金額が少ないので、そうした人間関係は継続しやすいのです。
増田:エンジェル投資の本を書いたのも、日本の起業を取り巻く環境をアメリカレベルにしたいという思いがあります。
私は日本のプロダクトはアメリカに比べて決して劣っていませんし、それどころか同じかそれ以上のクオリティがあると思っています。
それなのにアメリカのシリコンバレーでスタートアップ企業のバリュエーションがつき、成功しているのはエンジェル投資家がいるかいないかの違いです。
日本ではスタートアップ時にお金を集めても1000〜2000万円しか集まらず、そのお金がなくなると融資やベンチャーキャピタルに出資をお願いというように、経営者はプロダクトに関連したビジネスより資金繰りに追われてしまいます。
ところが、アメリカではエンジェルフェーズでも数億円規模で集まることが珍しくありません。そうするとお金の心配は不要になり、いかに面白いコンテンツを作るか社会的にインパクトを与えるものを作るかに集中できるようになり、面白いものができやすくなっています。
日本にエンジェル投資家が集まり億単位の出資が可能になるようになれば、日本もきっとそうなると思っています。
エンジェル投資に興味がる方には、日本の国のためや経済対策にもなるので、是非、挑戦していただきたいと思います。
ベンチャー企業に投資を行った個人投資家に対し、税制上の優遇措置を行う「エンジェル税制」もありますし、年収が高い方がエンジェル税制を使うと、税金として払うお金がスタートアップの出資金にかわります。
このサイトを見ていただいている方で、エンジェル投資に興味がある方には、一言、「一緒にエンジェル投資の会などしていきましょう!」と強く訴えたいですね。完全会員制サロン「ReBirth」※http://riche-lab.jp/riche-lab/rebirth/ でイベントや交流会を開催しているので是非ご連絡ください。

増田裕介
(ますだ ゆうすけ)
株式会社RicheLab(リッシュラボ)代表取締役
慶應義塾大学商学部卒。大学在学中に起業し、IT、PR、美容、飲食、教育系のビジネスに従事。2018年までに7社を起業し、4社のバイアウトを経験。また2017年に当時最年少で内閣府から公益認定を受け、公益財団法人日本教育文化財団を立ち上げ代表理事に就任。2020年には適格機関投資家として金融庁に登録される。
現在はシリアルアントレプレナーとしての事業運営、エンジェル投資家としての出資活動をする傍ら、経営コンサルタントとして次世代起業家のサポートに力を注いでいる。
「一口30万円から、エンジェル投資家になって億を築く!」(ぱる出版)