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ビジネス書勝ち抜け案内 第1回 「ビジネスで勝つネットゲリラ戦術」

『ビジネスで勝つネットゲリラ戦術』

えらいえんちょう著

KKベストセラーズ、20197月刊、1300(税抜)

基本データ

・ひとことで言うと……ゲリラ戦なら個人が大企業に勝てる

・評価(5つ星が最高点)

項目

評価

寸評

よみやすさ

★★★★

SNS世代には読みやすく共感できる

実現できそう度

★★★★

「持たざる者」が実行できる方法

成功度合い

★★

凡人にも手が届きそうな成功

感情揺さぶり度

★★★

イスラム国のエピソードが面白い

内容充実度

★★★★

内容は成功への本道、骨太の一冊

本書のナナメ読み

 今は、私たちしょぼい個人でも主役になれる時代である。大企業や大組織を敵に回しても、個人が勝てることができるのだ。

 そのためのキーワードは「ネットゲリラ」。組織に属さず、ネットの武器を使い、少人数で効果的な戦いを展開していくのだ。本書はそんな「ネットゲリラ」の戦い方のルールブックである。

 ネットゲリラの戦い方の基本、それはバグを突くことだ。ビジネスが決まりきったルールで行われていれば、個人が勝てる余地はないだろう。しかし現実にはバグが存在する。例えば人の感情である。人の感情は不安定で、しばしば経済合理性に合わない行動をとる。そんなところに、ネットを利用して、自分の持つ全リソースを素早くつぎ込むのが、ネットゲリラの戦略なのだ。

 ネットゲリラの戦略で重要なことが「贈与」である。例えば100円の花であっても、相手がひどく落ち込んだ時などであれば、とても喜ばれるだろう。経済のバグを突くのに有効な手段が贈与なのだ。

 贈与といっても、それはカネやモノには限らない。「感情」を渡すことも立派な贈与となる。自分の感情をシェアしてもらいたい、こんな人の渇望を満たすことに大きな価値があるのだ。

 ネットゲリラといっても、仲間は必要である。しかし、そのつながりは大企業のような、きっちり末端までコントロールされた組織ではない。ネットゲリラが目指すのはゆるいネットワークなのだ。利害を共有し、オンラインでつながった関係だ。

 ゲリラ型の戦いでは「あいまいさ」が大事になる。例えば、ベトナム戦争でアメリカの正規軍がゲリラに敗れたのは、ゲリラが従来の戦いのルールに従わなかったからだ。このような組織はゆるいネットワークで実現できる。ネットを通じ、ゆるいつながりを作ることが勝利につながるのだ。

 ゆるいつながりでは、大企業が嫌うアウトローの人材も仲間にできる。アウトローにも優秀な人材はたくさんいる。仕事はパフォーマンスで評価するべきだ。変な差別は厳禁である。もし困ったことがおきれば、すぐにさよならしてやればいいのだ。ゆるいつながりであれば切り離すのも簡単だ。

 その他にも「守りに入らず攻めまくること」、「相手の共感を得ること」、「人が集まるシンボルを作ること」、「圧倒的なわかりやすさ」、「弾を打ち続けること」などが重要となる。

 ルールは変わったのだ。しょぼいビジネスゲリラでも勝てるように。古い武器を捨てて、身軽なゲリラとして戦おう。

本書の勝ち抜け案内

一個人が億単位の売り上げをあげたり、特定の分野ではテレビ局よりもYoutuberの影響力が強かったりと、従来のビジネスのルールが変わってきたと感じている人は多いだろう。しかし、それがなぜなのか、的確に指摘できる人は少ないのではないだろうか? せいぜい「ネットの時代だから」くらいの一言で済ましているだろう。そのメカニズムを言語化したのが本書と言える。

大企業に個人が勝つための戦術が説かれているが、ここに書いていることの逆をやってしまえば、個人が勝てる見込みはない。リソースを分散させたり、決断に時間をかけたり、コンプライアンスを優先したり、きっちりした組織を作っていると個人は負けてしまうのだ。そんな観点で自分のビジネスを見てみると良いだろう。

また、著者はいわゆる「炎上系」であるので、炎上に関する内容が非常に参考になる。言うまでもなく、炎上は一時的に世間の注目を集めることができるが、使い方を間違えると一発で自分のビジネスを吹き飛ばしてしまう劇薬にもなる。

炎上は先手必勝であること、炎上を消そうと思っても逆に燃え上がること、政治や宗教や性的マイノリティといったセンシティブな話題を扱うときには事前にしっかりと勉強することなど、本書から学べることは多いだろう。特に、著者の店に行くとイスラム国に送られてしまう、という噂が立った時、著者があえて自分の店に他の分野で怪しい人を呼び、怪しさを別の怪しさで中和したという話は印象的であった。

大企業は炎上をただ恐れる。そんなところにバグが存在しているのだ。もちろんネットゲリラはそこを突くべきだ。炎上を恐れるな。

こんな誤読をしてはいないか!

著者の「えらいてんちょう」という名前やYouTubeチャネルの内容、そして本のタイトルや表紙などを考えると、本書はキワモノや裏技などを紹介したチンピラ的な本ではないかと感じてしまう。しかし、中身は現代を生き抜くために必要な知識を解いた、本道のビジネス書となっている。

ひろゆき氏が「個人的に言語化していなかった法則を、言語化して貰っちゃった感。」という推薦文を寄せている。自分の頭が古くなっていないか確かめるため、著者の言語を使って自分のビジネスをチェックしてみる、という使い方をされてみてはどうだろう。

著者プロフィール

えらいてんちょう(矢内東紀)

19901230日生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。バーや塾の起業の経験から経営コンサルタント、YouTuber、著作家、投資家として活動中。2015年リサイクルショップを開店し、その後、知人が廃業させる予定だった学習塾を受け継ぎ軌道に乗せる。2017年には地元・池袋でイベントバー「エデン」を開店。その「エデン」が若者の間で人気を呼び、日本全国で10店、海外に2(バンコクと中東)のフランチャイズ支店を展開。各地で話題となっている。2018年に初著書『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)を発売し、ベストセラーに。